<自然と余白と>
河川がカーブして出来た自然の地形と、直交グリッド(格子)によって分割された人工性の強い街区との接続地点に敷地は位置する。
大きなクスの木のある小さな空き地のような公園に連なる、長らく余白として存在していた変形地。
その敷地を見つけたご夫婦とこれから生まれ育つ子供たちの家。
変形地に合わせて45°に交差するグリッドに沿った平面計画とし、
木に向けて三角に凹んだ庭と三角の吹抜けを設け、
地形のレベル差を反映し半階づつ上る断面計画を採用している。
これら3つは、
敷地面積を有効に活用すること、
木と公園に対して隔たりと繋がりを適度につくりながら南面採光を導くこと、
しばらくはキッズスペースとして使う子供室を1階から目の届く1.5階に設けつつ、下階の畳みスペースを隣接道路からの見下ろしをかわせる窓と天井高さにできること、
の3つの実用目的に対応している。
結果的に大きさや形の異なるさまざまなスペースが集まったワンルームのような家となった。
外の公園と木が入り込んだような大きな吹抜けや、家具や収納のような親しみやすい小さな部屋があることで、
通常の「外部/建築/部屋/家具」といった意味とスケールによって分割された枠組みを中和するような連鎖性が生じ、
また、斜めの方向性が身体感覚に動的に作用し、
自由な解放性が感じられる空間となったのではないかと思う。
完成した建物を見て「となりのトトロ」の、
木が段階的に拡大成長するような
ワンシーンを思い出した。
20数年振りに映画を観直すと、サツキとメイとトトロが妙な儀式によって、
木の実を大木へと一挙に成長させる、
子供と自然の生命力とが呼応し合うような夢のシーン。
トトロが小・中・大と段階的なスケールの連鎖性として飛翔し、トトロの住処はクスの大木だった。
そういえば設計中、クライアントとは主にLINEのメールでやりとりしていたのだが、
その時のクライアントのLINEアイコンが「トトロ」のメイの画像だった。
なにがどう関連し計画に作用したのだろうか?!
←